ゆめすてば

棄てられた夢に、回収用のシールを貼ってあげる。そんなかんじです。

雨の中を歩く方法を真面目に考えてみる

久しぶりに台風がやってきました。現在首都圏は篠突く雨。こんな時は、外に出ずにじっとしていたいものです。しかしながら、現実はそう甘くない。土曜日とはいえ、仕事をしている人はたくさんいるはずです。かく言う私もその一人。この雨の中、家に帰らなければならない。そんなあなたに、読んでほしくて筆を取りました。

 

・傘をさす

当たり前ですが、傘とは非常に悩ましいものであります。というのも、濡れないようにさそうと思うと前が見えなくなったり、手に持っている鞄が濡れたり。

また、傘そのものにも多少なりとも問題があります。まずはその携帯性の悪さ。折りたたみ傘もありますが、小さくて弱く、たたむのも大変、濡れたものを入れておくと鞄の中が濡れるか臭くなるかのどちらかです。かといって大きな傘を持っているのは面倒。中には人にぶつかるような、危険な持ち方をしている人もいます。

さらに、忘れやすいのも難点。電車の中にお気に入りの傘を忘れた!などといった悲劇は実にありふれています。

最も悪い点は高止まりする盗難率。傘なら盗んでいいだろ、などという安易な考えを持つ輩にいちいち腹を立てたり、そういう気持ちをツイートしたりするのは実にストレスフル。仲のいい友達が傘を盗んでいるのを見たりした日には人間不信に陥ります。「ちょっぱる」などという軽々しい言葉で表現されるその行為は立派な犯罪、窃盗です。最も簡単に「被害者」になる可能性があるのは、傘を所持することなのです。

そこで私は、ある結論にたどり着きました。

傘は、人間が使うには向いていない。

 

・カッパを着る

雨合羽、レインコートともいいます。ビニールの生地でできており、水を一切通しません。でもそれは、内部の湿気に対しても効果は絶大。不快極まりない着物です。しかしながら、傘に比べて価格が安く、盗まれたなどという話は聞きません。ただ、利点らしい利点はそれだけです。

 

・レインウェアを着る

前項の進化版。立派な登山用品であるそれは、今まで数多くの登山者を低体温症から救ってきました。ゴアテックスという生地で作られるものが多く、外からの水分は完全に防ぎ、湿気は抜けていくという夢のようなスーパー素材。実際のところはどうなの…?と尋ねてはいけません。この世に夢などないのです。しかしながら、防水性は雨合羽同等クラスでデザインの選択肢が広く、最近ではおしゃれなものも出回っています。欧米系の方は普段使いもしており、結構ダサめなものもカッコよく着こなしちゃったりしてますね。

ただしそのお値段、2万〜青天井。低価格のものはギャンブルです。つまり防水性がないものも混ざっているのでご注意。ちなみに登山用語では雨が染みるゴアテックスを「シミテックス」と呼びます。

 

・ビニール袋を着る

上二つの最終進化。ゴミ袋の底に穴を開け、頭を出します。私は地下鉄六本木駅でビニール袋を着たコーカソイドの妙齢女性を見かけ仰天しました。

 

・水着で歩く

高校生の時、海岸ではあんなに水着がいるのに、なぜ街中では一人もいないのだろうと不思議に思いました。仲の良い級友に聞くと、彼は、その必要がないからだ、と答えました。しかしどうでしょう。そんなことを言ったらオシャレなどという概念は崩壊してしまいます。

シカゴ学派社会学者ハワード・S・ベッカーという人は、逸脱行為というものは周縁からのレッテル貼りによって始めて「逸脱」と定義されるものであるというラベリング理論を提唱しています。すなわち、「水着で歩くのがおかしい」という「規範」は、本当に水着で歩くのがおかしい訳ではなく、水着で歩くのがおかしいというレッテルを貼った「周縁」によって勝手に作られているものであると言えます。

雨の中を水着で歩いたらどうでしょうか!きっと、不快でしょう。水着とは、晴れたビーチで着るものです。

 

・失恋をする

とは言えやっぱり周囲の目は気になるところ。出来るだけ、自分が所属する社会の規範に則した行動を心がけたいものです。雨の中を歩く、という行動が最も社会的に受け入れられやすい状況はなんでしょうか。それは、失恋です。そこそこちゃんとした服装の人が雨の中、傘もささずに歩いていたらどう思うでしょうか。ああきっと、あの人は憧れの相手に振られちゃったに違いない!と思うはずです。これこそ思う壺。見事社会に溶け込めました!何も、実際に失恋しなくてもよろしい。それっぽければ人は勝手に想像力を働かせてくれる生き物です。いざという時のために、会社や学校のロッカーに「そこそこちゃんとした服装」と「バラの花束」を備えておくと安心でしょう。

 

・特殊シールドを展開し体表に極接近した水分を反射する

練習あるのみ。君なら出来る、と世のオトナは言うでしょう。「しょうらいの夢」とは、そういうものの集まりです。雨と何の関係があるか、それは、大人になれば分かります。

 

いかがでしょうか。たとえ雨の外を歩く羽目になったとしても、僅かながら光明が見えたのではないでしょうか。実際にこれらの方法を試して、貴方がどんな結果に至ろうと私は一切関知しません。方向性を示したのは私ですが、選択したのは貴方です。「常識的な」行動を期待しています。